はさみとは、二枚の刃を組み合わせて、比較的薄いものを切断する「道具の総称」で、裁縫、理容、植木の剪定、華道、工業用、工作用など、用途に応じたさまざまな種類があります。
和ばさみ(=握りばさみ)、洋ばさみに分けられます。広義には「押し切り(裁断機)」もはさみに含まれるようです。
はさみにはX型(ネジまたはカシメ式・中間支点)とU型があります。
和ばさみはU型になります。その名前から日本で誕生したはさみのように思われていますが、紀元前のギリシャ時代の出土品に同じ形のものがみられるように、たいへん古い形です。日本には飛鳥時代に中国から朝鮮半島を経て渡ってきたと考えられています。現在ではさまざまな形のはさみが使われていますが、U型のはさみは日本の握りばさみしか使われていません。
和ばさみ
軟鉄をたたき出して帯状にし、両端に刃の部分となる鋼を鍛接して焼き入れ、刃の仕上げ砥ぎを行ってから最後に曲げて成形する。
洋ばさみ
全体を鋼材から鍛造し、刃を仕上げてからメッキ、組み立てを行うのが普通。日本では軟鉄に鋼を鍛接した刃先に、握り部分を溶接して作ることが多い。
板金(1)から刃の部分を切り出します。
板金は軟鉄に鋼が合わさった複合材で、中央がへこんだ形状をしています(2)。へこんだ部分が刃の薄い部分になります。
刃は左右で向かい合った状態で切り出し(3)、斜めにカット(4)。これで左右の刃は同じ部材から、ほぼ同じ条件のものを得ることができます。
この刃を、柄の部分の部材(5)に溶接します。
刃を柄に電気溶接します(6)。
そののち、バリとり(7)、荒おろし(8)、柄の部分をプレス、その後焼き入れ、焼きもどし、中みがき、上みがき(イブシ仕上げの場合はここでもう2工程)を経て(9)、特殊な工具で柄の部分を曲げます。
何十もの工程を経て、やっと一丁の握りばさみが仕上がります。
(1)以降は職人さんの手仕事です。工場で大量生産されるものではないので、一丁一丁、少しずつ違いがあります。
和ばさみは手前に支点、中央に力点、先に作用点。
洋ばさみは手前に力点、中央に支点、先に作用点。
押し切りは手前に力点、中央に作用点、先に支点。
(わかりやすいように左右反転しています)
包丁とは一般に調理をするために使用する刃物のことを指し、その名前は中国古代の料理人庖丁(ほうてい)からきたものといわれています。
料理用包丁は和包丁、洋包丁、中華包丁に大別されます。
広義には「薄い金属を利用し、手にもってものを切断するもの」全般を指します。料理用以外の包丁の例としては、紙裁ち包丁(写真)があげられます。
和包丁は炭素鋼と軟鉄を鍛接(たんせつ)して鍛造し、焼き入れしたものが一般的。刃の部分が炭素鋼(鋼)、側面が軟鉄です。
柄(え=持つところ)を朴(ホオ)材、口金は真鍮やプラスチックで作ることが多いが、高級品では柄を朴の心材、口金を水牛の角で作ったものもあります。
洋包丁は一枚の鋼板を切り出して焼き入れしたものが一般的ですが、和包丁が「水焼き入れ」をするのに対して、「油焼き入れ」をするという違いがあります。
刃は3層で、まんなか(刃)は炭素鋼または高炭素ステンレス鋼、側面はステンレス鋼のものが多いです。
柄には積層合板がよく用いられます。ブナ材、桜材、また高級品には黒檀を使ったものもあります。
和包丁
和包丁の柄は丸く、柔らかい材質。刃は柄に差し込まれています。
洋包丁
洋包丁の柄は角ばっており、硬い材質。刃は柄に挟み込まれています。
柄の前に刃の一部が突出している形状もあります。刃の一部でなく別の金属部品でできている場合もあります。共にツバ付きや口金付きと呼びます。
口金付きの洋包丁(写真はペティナイフ)
包丁の刃渡りとは普通刃のついている部分の長さを指しますが、正夫は柄の付け根部分からの長さを刃渡りと呼びます。(1)
柄に差し込まれている部分、「茎(なかご)」を見ると、正夫は付け根から幅が細くなっています。(2)
正夫の刃渡りが柄の付け根から計上するのはこのことに由来するようです。
このように、茎(なかご)の幅が変わる包丁は柄の付け根から刃先までの長さを「刃渡り」と呼びます。
正夫のほか、舟行、薄刃も柄の付け根からの計上となります。
出刃包丁の刃渡りは、刃の付いている部分の長さです。(3)
茎(なかご)の幅は外に見えている部分から変化しません。(4)
出刃のほか、諸刃出刃、身卸、菜切、面取も刃のついている部分の長さを「刃渡り」と呼びます。洋包丁もこちらです。
◇刃の付いている部分=刃渡り
出刃、諸刃出刃、身卸、菜切、面取、洋包丁
◇柄の付け根から切っ先まで=刃渡り
正夫、舟行、薄刃