職人の技術

ショップと専門店の違い

刃物店(=刃物専門店)と刃物を売っている店(=ショップ)との違いについてお話ししてみたいと思います。

まず、職人を育てるのが刃物店、社員(店員)を育てるのがショップ、と考えることができます。職人はまず経験を身につけます。ここで「伝統」という言葉を使うのは抵抗があるのですが、職人に経験を身につけさせるには、伝統が必要です。ショップに30年勤めていても、職人にはなれないのです。職人と店員が違うというのは何となくわかっていただけるでしょうか。

別に一子相伝の技があるわけではありませんが、職人だったらできる、職人にしかできないことはあると思います。

初めて手にした刃物でも、いいものかわるいものか、どのように修理したらいいか、どうすれば刃物の持っている性能を引き出すことができるのか、それらは職人のいる専門店でないとわからないことだと思います。

銘を彫る

刻印を使わないで、げんのうとたがねで彫った銘です。

銘は「早川信久」「信久」。

ご来店の上お買い上げいただいた包丁には、お名前を彫ることもできます。漢字、カタカナが使えます。イニシャル(2~3文字)程度であればアルファベットでも彫れます。


刃を砥ぐ

3丁は同じ包丁です。

左は新品(刃渡り17.5cm)です。

中央は5年ほどで刃がぼろぼろになるような使い方をされました。修理をすると新品同様になります。

右は40年ほど使用されたものです。まだまだ使えます。

左右は同じ包丁です。

左は新品(刃渡り18cm)です。

右は当家で41年使っていました。いまは店に置いてお客さまに見ていただけるようにしています。


柄の折れた包丁の修理

柄(え)が折れた包丁も直すことができます。

朽ちかけた部分を切り落とし、茎(なかご)を作り、柄を付けます。

洋包丁も同じように直せますが、柄はこのような和包丁のものになります。

長持ちする裁ちばさみ

この裁ちばさみは大変悪い状態になっていますが、品物がよいので上の刃のように修理することができます。この程度の裁ちばさみの砥ぎ代は2,500円前後です。

通常24~26cmの裁ちばさみの砥ぎ代は1500円からです。

 

小さくなります

右は新品(10.5cm)、左は長年縫製工場で使用された同じはさみです。

ここまで小さくなるまでには、何十回砥いだかわからないくらいです。

腰(曲がっている部分)が折れるまで修理して使うことができます。


分解修理が基本

はさみも包丁も、いい品物であれば、錆びていても刃がかけていても修理することができます。

当店でご購入いただいたものは、ときどき修理すれば何十年もご使用いただけます。

花ばさみも木ばさみもカシメ(ねじの部分)をはずして修理するので、よく切れるようになります。修理代は1500円からです。


当店最大のはさみ

早川刃物店にある最大のはさみ、全長77cmの「握りばさみ」です。

鋼入りなのでよく切れる一流品ですが、このはさみにあった手の持ち主はあまり多くありません。仁王様くらいでしょうか。非売品。

(右下に写っているのは10.5cmの握りばさみ)

当店最小のはさみ

最大のはさみが77cm、では最小のはさみはというと、3cmの握りばさみ(右端)です。これも非売品です。

左端は10.5cmの握りばさみ。

では中央は最小の包丁でしょうか。

これは包丁ではなく、寿命がきて折れてしまった握りばさみの刃の部分です。

全長約4cm、役目を終えた握りばさみを処分するのが惜しくて、包丁風に仕立て直したものです。

握りばさみは使い込んでいくと刃の部分がだんだん小さくなっていきます。

やがて腰(曲がっている部分)が折れてしまいます。これが本当の寿命です。